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  四月の詩(三)   鰈釣り

どの季節の鰈釣りにも風情があるけど
風がぱたりと止むと
釣り人がほんとにこの世界で
生きてるのかどうかさえ疑わしくなる

水平線に向かって
釣り糸を目いっぱい投げるときこの世界に切れ目が走る
気が遠くなるほどの遠浅から
砂まみれの釣り糸の鰈を巻き上げる波紋にも見飽きない

あとはただただ
竿を斜めに立てかけて
鈴が教えてくれまで文庫本に読みふける

出てくるものは嘆息ばかり
砕けるばかりの光と波との中で
難破船よりも心細くなる
これほど優雅な釣りもない


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