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  四月の詩(1)   春であるらしい 

ドラマ『深夜食堂』を観ていたら
子供の頃からの勘違いを思い出した

街角の張り紙「10円です」
パンのミミの山に有頂天になった夕もあった
パンで高級なのはミミだと幸せな誤解をしていた
歯応えがあってはるかに旨いのだから

ただその街にも
ぼくのような貧乏人のが多いせいか
それはたった一度きりの贅沢だった

夏にはスイカ畑という天国を駆け回り
秋には芋畑からバケツ一杯の収穫
よくも警察や百姓に捕まらなかったもんだ

冬から春にかけては
げっそりと痩せさらばえてはふらふら
穴だらけのリュックを背に
山菜採りに駆け出していた残雪の道


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