おれの心はいったい
どっちを向いてきたのかだろうかと
巡らなくても済んだだろう多くの地獄がおれに囁きかける
それはどこまでも続く夕焼け
廃線の上に広がる
どんな赤よりも鮮やかな鮮血の色
その故郷の敗残を見ずにはすまなかった
放浪時代のぼくは
人気ない線路をよく歩いた
人間など煩わしいだけだったので
深夜に疲れ果て線路の横に寝そべっていると
ドーベルマンみたいな犬が二匹
人間の俺などには目もくれずに
海へと駈けてゆくのが羨ましかった
聳え立つ大樹の下にテントを張り
川から水を汲んで沸かしながら夢想した
巡る銀河と人工衛星と予言の中で
いったいどんな未来へと行き着くのだろうかと
夜がだいぶ更けてから
その樹が寝床らしいカラスが一匹やってきた
「カー」と一声鳴いてからぼくらは
樹の上と樹の下とでかってないほど熟睡した
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十一月の詩(15) 心はどっちを向いている
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