Quantcast
Channel: 詩人PIKKIのひとこと日記&詩
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5481

 古い短詩(3) 「春の風」

$
0
0

  新しい風にはいつも
  新しい匂いと手触りがある
  この国の山野が破壊しつくされ
  どこもかしこも放射能だらけというのに

  似た郷愁をだが
  はるかに魅力的と見せかけるのは
  大量消費のためのいつもの資本主義のやり口
  単に少し早いとか少し安いとか
  そうとうに厚化粧というだけなのに 

  春の風は希望と一緒に
  馬車に乗ってやってくる
  つんと鼻にくる潮風
  あちこち転がる馬糞の山の中を

  馬車どころか
  馬を見かけるのは早朝の馬術クラブくらいになり
  いまやラジオやテレビでお馴染になった
  通販での馬肉の刺身や加工品や缶詰

  一度社会から「役立たず」の烙印を押されると
  もう誰からも相手にされず
  抹殺されるのを待つだけの人生
  競馬で落ちこぼれると馬を待つのも
  屠殺場行きと食肉の運命
  まれに種付け料数百万円とやり放題の幸運な馬もいるけど

  馬という馬はぼくのように
  北海道の牧場のある方を懐かしんでいななく
  生まれたばかりの数万の風
  葉脈を梳きながらやってくる風に頬擦りしたくなる



Viewing all articles
Browse latest Browse all 5481

Trending Articles