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コロナ対策 : 長野県池田町の竹内教育長の文章ーその思いと姿勢

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みなさんへ
愛媛の高井弘之です。
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【長野県池田町の竹内教育長の文章ーその思いと姿勢ー】

大日本帝国下の「国家による強権統制」学校教育制度の総括ー反省に立つ戦後の教育制度の基本は、周知のように、「教育の自治」である。

そしてその「教育の自治」ーー「自治体教育行政」を担うのは、本来、首長・一般行政機関ではなく、そこから独立した(教育行政機関たる)教育委員会である。

このことを踏まえるとき、首相・安倍の行為が何であるかは語るまでもないが、これに抵抗して、自治体独自の方針を決め、実行するのも、(いま、その多くがそうであるところの)自治体首長ではなく、本来、教育委員会のはずである。

ここから見るとき、下記の、国の「上意下達」にそのまま従うことなく、また、町とも一線を画して、「当事者である子ども、保護者、教師の立場に立った・・判断をしようと考え」、実行しようとしている長野県池田町の竹内教育長の姿勢はとても重要かつ貴重だと思う。当面の具体的施策としては、少なくない休校日を設ける形になってはいるけれども、下記の文章に表された彼の姿勢や思いから、多くの大切なことを考えさせられるのではないかと思う。

全体としてとても長くなってしまいますが、
まず、大日本帝国下の学校教育を反省ー総括した「戦後教育」出発時の文書(『教育基本法の解説』)を紹介した後で、上の竹内教育長の文章を紹介したいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・

「わが国では、明治5年に学制をしき、全国の教育制度を統一するとともに、教育行政上の権能を中央政府に総括する主義を確立した。・・・しかしながらこの制度は、地方の実情に即する教育の発達を困難ならしめるとともに、教育者の創意とくふうを阻害し、ため
に教育は画一的形式的に流れざるをえなかった。又この制度の精神及びこの制度は、教育行政が教育内容の面にまで立ち入った干渉をなすことを可能にし、遂に時代の政治力に屈して、極端な国家主義的又は国家主義的イデオロギーによる教育・思想・学問の統制さえ容易に行なわれるに至らしめた制度であった。」(『教育基本法の解説』ーー教育基本法の立案をした当事者らがその「立法者意思」を明らかにしたもの)
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【長野県池田町の竹内教育長の文章】
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新型コロナウィルス対策への対応について(私の思い)
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長文ですが最後までお読みいただけると幸いです。
今回、全国の自治体で様々な対応が検討され決断されていますが、決して表面的な通知文面だけで判断することなく、地元のみなさんには、そこに至る背景やプロセスに関心を持っていただきたいと思います。

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27日の首相発言を受けて、昨日28日はまさに日本全国が「振り回された一日」だったと、率直に私は感じています。

WHO(世界保健機関)が「新型コロナウイルス感染の危険性が世界的に非常に高い状況」だと宣言している以上、子どもはじめとする町民の健康を最優先に考える町として、できることはなんでもやるという姿勢は不可欠です。

しかし、こと教育行政においてはこれまでも強く感じてきたことですが、子どもたちや教育現場に一番遠いところにいる国が決めたことについて上意下達(妄信的)に従ったほうがいい、といったような風潮(文科省のみなさんはそうしたいとは全く思ってないと察しますが・・・。特に今回)に対して、激しい違和感を感じるのは私だけではないと思います。

「悪法もまた法なり」というソクラテスの言葉の通り、法治国家である以上、為政者が示した方針が、時に国民の大多数の意にそぐわないものだとしても従うのは行政の宿命であり、その構造自体を否定するつもりはありません。

私としてはそんなことを密かに胸に抱きつつ、池田町及び池田町教育委員会として以下の判断をいたしました。

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【町内小中学校の臨時休校について】
池田町は国や県が示した「3月2日(月)から春休みまで臨時休校したほうがいい」という要請に対して「2日間ずらして4日(水)~17日(火)までの平日10日を含む14日間」を臨時休校(休業)といたしました。

昨夜のニュースでは県内77市町村のうち、65市町村が国が示した2日から休校とする判断をしたということを知って正直驚きましたが、それぞれのご判断は各自治体の事情やお考えによるものなので尊重するとして、池田町教育長としては、来週月、火の「2日間を登校日とする」意義を以下のように考えました。

◆まず一つ目は「子どもたちに少しでも気持ちの準備をさせてあげたかった」ということです。
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普通に考えてみていただきたいのですが、大人の私たちだって「明日から会社こなくていいよ」といきなり言われたら少なからず動揺しますよね?(バブル世代としてはとっても現実味がある話です・・・)

今回の判断がもし年度初めや夏休み前とかだったら、後でいくらでも取り返しつくだろうと、さほど焦らないかもしれませんが、年度末ギリギリの3月において突然「学校は明日でおしまいです」と言われた子どもたちの気持ちを想像するに、国に言われるがまま「月曜から休め」とは、私はとても言いたくありませんでした。

特に卒業間近の小学6年生や中学3年生にとっては「ということで、残念ですが、君たちの学校生活は今日が最後になってしまいました。」などと、とても大切な事を「最後の登校日」の朝に突然言い渡されて、それに反発もできずに、自分の気持ちを無理やり納得させるしかない、そんな子どもたちの気持ちはあまりに切ないと思いました。

その一つだけをもってしても、私は2日から休校とする合理的理由を全く見出せませんでしたし、むしろ1日でも2日でもいいから、子どもたち自身に気持ちを整理する時間を作ってあげたいと考えました。(余談ですが、小学校時、教科書で読んだ「最後の授業」(アルフォンス・ドーデ)を思いました・・・)

◆2つ目は学校現場の先生方にとっても2日からの休校は乱暴すぎると考えたからです。
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私は池田町の小中3人の校長先生方に全幅の信頼を置いています。常に子どもたちの立場に立って考え決断し、子どもたちのために最善の環境づくりに尽力いただいている校長先生方と一緒にこの難局を乗り越えるために、その思いや考えを最大限尊重した決断をしたい、むしろ決断すべきだと考えました。

もし「2日から休校にする」と町と教育委員会が一方的に決めた場合、子どもたち同様に、現場の先生方にとっても28日が否応もなく年度最後の一日になってしまいます。前日までは予定通り、残された年度末の大切な一日一日を子どもたちと一緒に過ごそう、少しでも楽しい思い出作りをしようと考えていらっしゃったと思います。それなのに、遠い国が出した方針によって、それに対して現場からの思いや意見を表明する間も無く「ということで、今日一日で2週間分の仕事全部終わらせて!」なんてことを当日の朝指示することは、教師として矜持を持って仕事に臨んでいただいている先生方に対してあまりに失礼だし、その役目をお願いする校長先生に大変申し訳ないと考えました。(ここでもまた「最後の授業」のシーンが頭に浮かびます・・・)

実際に2日から休校にするという判断をした自治体では、現場の先生方は今日明日の土日も当然出勤です。それもまた理不尽だと私は感じましたし、教育長としてやはり「2日から休校にすべき」という合理的な理由は全く見つけることができませんでした。4日から休校という判断は、3人の校長先生たちのお考えをしっかり伺った上で私が判断い
たしました。

◆3つ目は保護者のみなさんにとってもやはり仕事の調整等の準備期間が最低限必要だろうと考えたからです。
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今やほとんどの保護者が働いています。27日の報道を知った保護者のみなさんは28日の朝まで、本当に眠れないくらい心がざわついたと想像します。
当然「2日から学校が休みになったら仕事をどうやって休もう」とか「休めないときに子どもを家に一人で置いておいて大丈夫だろうか」とか、様々な場面を想定しながら不安が増すばかりだったと思います。
今回の休校要請は子どもたちだけの問題でなく、むしろ保護者の方に実質的でより大きな影響がでるものと考えています。

子どもや先生同様に、保護者にとっても2日からの休校という判断はあまりに乱暴であり、「なぜ2日から無理にでも休校にしなければならないのか」と、もし保護者に尋ねられたら「いやあ、国や県がそうしろと言ってるので・・・」という以外の答えは私には思い浮かびませんでした。
それは私の信条として死んでも言いたくない言葉ですので、池田町としてできる限り当事者である子ども、保護者、教師の立場に立った、可能な限りデメリットが少ない現実的な判断をしようと考えました。

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小中学校の臨時休校と併せて、以下の通り、いくつかの判断をいたしました。
①期間中、保育園は2園とも開所する。
②期間中、2つある児童クラブは長期休暇同様に午前中から開所する。
③小中学校の卒業式は感染拡大防止の観点から、規模や時間を最小限に縮小した上で予定通りの日に挙行する。

本来、感染拡大防止を徹底するならば、保育園も児童クラブも閉鎖して、まさに北海道のように2週間家から出ないようにとするのが効果的でしょう。

しかし現実的にそれはどう考えても無理だと判断しました。
とにかく感染予防は各ご家庭で徹底していただきながら、どうしても働かなくてはならないご家庭のお子さんは保育園で預かり(保育園の本来業務です)、小学校に行けない子どもたちがずっと家にいなくてはいけないという新たなストレスを想像した場合には、子どもたちの居場所も最低限確保すべきだと考えました。

もちろん、保育園、児童クラブにおいても最大限感染予防に配慮しますし、通常よりも職員体制も強化する予定です。
(例えば、小学校で支援員をしていただいている町費の先生方に、休校中は児童館のサポートスタッフとして入っていただくよう調整しています。)

とにかくこういう突然の対応策を迫られたときには、ある程度考えた時点で最もデメリットが少ない方法を選択しつつ、現場本位に試行錯誤しながら、状況に応じて臨機応変に修正していくことが大切です。
(上からの指示を受けて思考停止になることが最も危険です!!)

ですので、今回の通知内容も、常により良い対応があるかどうか検討を続けつつ、より良い対策が見つかれば柔軟かつ積極的に修正変更していくつもりです。

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小中学生の卒業式については、先にも書きました通り、この3月に特別な思いを抱いていた子どもたちから「卒業式まで奪うことはできない」ただそれだけの理由です。

現場の先生たちも何とかして卒業式はやってあげたいと誰しも願っています。保護者も全く同じでしょう。(池田町では保護者の参列は認めています!)

例年とても楽しみにしている地域の来賓のみなさんに、ご参列いただけないことは本当に申し訳ないとお詫びしたいと思いますが、式では会えなくても町で見かけたら「今回のことを残念に思うだけでなく、自信をもって胸をはってこれからもガンバレ!」と大きなエールを、ぜひ子どもたちそれぞれに送っていただきたいとお願いいたします。

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なお、これは私自身はちょっと残念に思っていますが、昨年9月のオープン以来、日に日に小中学生の居場所としてにぎわいを増してきた「交流センターかえで」が図書館含めて、同じ期間、全館休館にすべきという町の判断がなされたことでした。

同様に総合体育館、クラフトパークの展望美術館と創造館も4日から17日まではすべて休館です。

外にでればどうしても感染リスクが高まることからすれば致し方ないと思いつつも、逆に居場所がない子どもたちが結局、町中をさまようようなことになるのではとも危惧してい
ます。

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以上、とりあえず暫定的な対応として昨日決定いたしましたが、17日まで全く何も考えず、何の修正もしないということではなく、月曜日から子どもたちや現場の様子を丁寧に見守りながら、また保護者のみなさんからの様々なご意見もいただきながら、必要に応じて迅速な修正対応をしたいと考えています。

例えば、大町市はじめ県内外いくつかの自治体で予定されている「低学年の子どもたちだけでも小学校で過ごせるようにできないかどうか」ということについても、すでに校長先生方と協議を始めています。もちろん、子どもたち自身の思いと考えもしっかり聴きなが
ら進めます。

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繰り返しますが、今回の対応はあくまでも3月17日までの暫定的なものです。

3月18日(水)からの春休みの過ごし方は例年通りでと考えていますし、状況次第では、数日でも春休み中に登校して、子どもも先生も、学習面含めやり残したことをそれぞれにフォローできるようなことも考えたいと思います。

とにかく、この事態が一刻も早く収束することを切に願うばかりです。
一日も早く、子ども、先生、保護者、地域の日常が戻る様に祈りつつも、それまでの間、めったに経験できないこの状況を逆に活かすくらいの気持ちで、みんなで対話すること、協力しあうこと、連携して苦境を乗り切ること、などを体験として、必要な学びとして、子どもたちと一緒に受け止められるそんな池田町になれたらいいなあと考えています。

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冒頭でも書きましたが、今回の対応において「絶対的な正解」はないと思います。どの自治体、どの教育現場も、まったくもって十分な時間もない中、実に様々な制約や多方面への配慮をしなければならない中で、それぞれ可能なかぎり情報収集し、真剣に検討し、子ども、保護者、現場の教職員への配慮を盛り込んだ決断をしているはずです。

どうか保護者のみなさんや地域のみなさんには、各自治体の通知だけを比較して「良い悪い」などとは言わずに、誰にとっても未知で経験のないこの難局に向かうべく、一緒に考え、知恵を出し合い、理解しあい、支え合って、自分たちの町として乗り越えられるよう
、それぞれの地域力が発揮できたらと心から願っています。

まさに「逆境をチャンス」にできるよう、池田町も止まることなく考え続けます。ぜひ引き続き忌憚ないご意見をお願いいたします。

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追伸:だらだらと好き放題(地方の小さな町の教育長のささやかな抵抗として)書いた文章ですが、シェアいただける際は、私の文章も一緒にシェアいただけると嬉しいです。

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