転落事故

疲れ果ててしまったせいか
駆け通しだったせいか
真っ暗な谷底へと
足を踏み外してしまった

このまま大勢から
後ろ指を差されたまま
死んでゆかねばならないのだろうかと
血まみれで見上げていた漆黒の狭い空

しばらくして川下の方から
遠い街の灯がまたたきだし
星がまたひとつあらわれる

いよいよ高まりゆく川音の中で
無事に生き延びられたら
きみに告げたいひとつの言葉があった

この世で遣り残した
ただひとつの事があった