
開かずの踏切りという難問がある
それがますますぼくの通勤を拒む
思い出の花が咲き乱れる春の踏切りや
風がかくれんぼする踏み切りを
思い出してはいつもやりすごすんだけど
踏み切りは
この世界で待ち受ける最後のもので
あの世へとぼくを誘う最初のもの
今日もまた日本のどこかの踏切りで
人身事故で不通というニュースがまたイヤホーンから
いつまでも永遠に
開こうとしないかのような開かずの踏切
その虚無の空間には
飽きることなく行き来するアキアカヘネ
原発事故以来は
いったいどんな大量の放射能まみれの雲
さらにそれに追い討ちをかける瓦礫焼却の煙
生きる先を見失ってしまったその踏切りから
そのまま遠い世界へダイビングしてしまった人々の後ろ姿が夕焼けになる
ぼくらの文明は
あまりにも人間の血を吸い込みすぎてしまい
最後の叫びに満ち溢れた血痕
開かずの踏切ばかりが増えてゆく日本低国