昔からずっと想っていた
誰でもいいから
俺を縛り首にしてくれ
そう自覚したのは
中学に入ってすぐの昼下がりの
日陰の雪だまりを見下ろしていた時
あの雪だまりに飛び込めたら
どんなにいいだろうかと
ひりひり痛感した
韓国と日本は戦時中の慰安婦に加えて、特に最近は徴用工問題がクローズアップさてい る。しかもそれらには往々にして、ヘイト・クライムが伴う。しかも日本政府は、ほとん どいつも逃げ腰だ。「ほとんど」と言うのは、かろうじて河野談話が出ているからだ。
ところでこの映画『雪道』(監督:イ・ナジョン)はまさに、だまされたり拉致されたりして朝鮮との国境近く 、現在の牡丹江市の慰安所に連れて行かれた少女の物語である。
だからといって「被害者」として声高に叫んだりはしない。淡々と事実を写していく。遠 慮がちに、ところどころ出てくる朝鮮籍の兵士をいじめたり、突然怒り出す日本兵や慰安 所の管理人のおばさんの態度が気になったりするのだか。
もちろん彼女たちには人権はなく、妊娠すれば堕胎させられ、梅毒に侵されれば殺され る。自殺の自由さえない。
もっともひどいのはその隊がフィリピンに移動になる前日、現地調達品は捨てていけと いう命令に従って、日本人以外の慰安婦は殺されることだ。つまり彼女たちは人間ではな くて「物」なのだ。それを察して主人公の2人の少女は前から話していた逃亡を決行する 。雪の中を1カ月も歩けば朝鮮だと聞いたかすかな情報を頼りに。
さて、映画はハルモニ(おばあさん) の慰安婦時代と、現在その隣に住む女子高校生と の交流という二重螺旋になって進む。少女たちは、いずれもその歳では背負いきれない現 実を背負って生きているし生きてきた。戦時の非人間的な扱いとその後の故郷に住めない 辛さ、現代の崩壊家庭の中で虚勢を張っていないと潰されてしまうような「女の子」。
2人の生き難い女性が、次第に家族のようになっていく。どんなに突っ張っても見捨て ないハルモニ。その少女時代の真実の話。その話を聞きながら、少しやさしい表情を浮か べる「突っ張り」。もしかしたら、彼女も素直な高校生になれるのかもしれないと希望が 見えてくるのだった。そしてハルモニにも……。
●上映は3月2日(土)18:30
於:なかのZERO小ホール 入場料:1500円
主催:「雪道」東京特別上映実行委員会
申込み・問合せ:050-6873-9916 kmoviesc@gmail.com