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<みなぶん>図書館利用者情報 半数が提供 増える捜査協力 内心の自由、せめぎ合い続く

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 「図書館が利用者の情報を警察に提供していいのですか」。苫小牧市の無職の男性(68)が北海道新聞にメールを寄せた。苫小牧市立中央図書館が警察の任意捜査協力に応じ、貸し出し履歴などを提供していたことが昨年末に判明し、不安だという。取材すると、道内外の公立図書館で「提供する」と「提供しない」に判断が二分している。そもそも情報提供は任意か、義務なのか―。その見解を巡って半世紀近く、「内心の自由」を守ろうとする図書館側と捜査機関との間で、せめぎ合いの続く構図が見えてきた。

→【関連】図書館の利用者情報 割れる判断

 日本図書館協会(東京)は1979年、「図書館の自由に関する宣言」(54年採択)を25年ぶりに改訂した。新たに「利用者の秘密を守る」との項目を設け、読書記録や利用事実を外部に漏らさないと明記。憲法35条に基づく裁判所の令状がある場合は例外とした。

 きっかけは75年。東京都立図書館が警視庁公安部の捜査員の求めに応じ、資料の複写申込書1万~2万枚の閲覧を認めた。この際に示されたのが、令状ではなく、任意で捜査協力を求める「捜査関係事項照会書」だったため、問題となった。

 宣言後も警察から同様の照会依頼が続き、図書館側の対応も次第に変化する。

 協会が全国の公立図書館に行ったアンケートによると、捜査機関が文書(照会書)で情報提供を依頼してきた際、95年調査では、依頼された91館中、応じたのは12館(13%)だったが、2011年調査では、依頼された192館中、113館(59%)が応じていた。

 道内の人口上位15市への取材では、札幌など8市が「提供する」、旭川など7市が「提供しない」とした。

 照会書は、強制力の伴う令状と異なり、刑事訴訟法(刑訴法)に基づく「捜査関係事項照会」手続きによる。しかし、応じる義務があるかや、拒否した場合の罰則について規定はない。

 これを根拠に、図書館協会は、人命に危険が及ぶなど特別な理由がない限り、任意捜査で応じる義務はないと主張。桃山学院大(大阪・和泉市)経営学部の山本順一教授(図書館情報学)も「利用者情報は個人の思想信条に関わる。一般的な行政情報より慎重に扱われるべきだ」と指摘する。

 一方、警察庁は99年12月の通達で「回答を拒否できない」として、事実上の義務だとする見解を示した。福岡県警本部長などを歴任し、京都産業大(京都市)社会安全・警察学研究所長を務める田村正博教授(社会安全政策)は「特別の理由もなく拒否すれば、迅速な捜査が妨げられ、市民の生活や安全を守る上で支障を来しかねない」と説く。

 デジタル技術の急速な進歩で、あらゆる個人情報が集積される時代となった。「内心の自由」や「思想信条の自由」に関する情報も図書館以上に膨大に、大型書店やレンタルビデオ店などに蓄積されているが、情報保護の議論は深まっていない。メールを寄せた男性は危惧する。「なし崩し的に提供されていかないか」

 実際、今年1月、ポイントカード最大手の一つ「Tカード」を展開する会社が、氏名・電話番号などの会員情報や購入歴、借りたレンタルビデオのタイトルなどを任意捜査で提供していたことが明らかになった。

 男性は「私もTカードを持つ。本や映画の趣向などが分かってしまわないか。自分の知らないところで、個人情報が集められているかもしれない―という社会は恐ろしい」と不安がる。(田鍋里奈)

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