ー戦後の高度成長経済で、日本人は急速に豊かになったけど・・悪政のためにまた元のようにほとんどが貧乏にされつつある。アメリカや官僚や財閥財界に千兆円以上貢いできたんだから豊かになれるはずがない!僕の家も家族でした贅沢全然なくて、一緒には農作業や山菜採りくらいだったけど、結構楽しかった・・毎年夏休みには、何処か遠くの海沿いや山奥の・・親戚の家に「避暑」だった。
ー2008年の詩(4)ー 余市海岸
雨の朝には何処か遠くへ行きたくなる
つんと磯の香に眩暈する遠い海辺がいい
君はまだ
最初に海を見た感動を覚えてるかい
ぼくが初めて海を見たのは
学校に上がるすぐ前の夏
売れない画家の伯父さんの
海辺の一軒家の前でだった
金がなくてその家しか借りられなかったんだという
朝になって外に出ると
一面の波また波の日本海
両端に聳える赤茶けた岬と岬の間には伯父さんの家しかない!
ぼくらは一日中断崖沿いの道を自転車で
漁港しかない街へと自転車で出かけたり
景色のいい岩場から沖の遊覧船を飽きずに眺めたり
「途中に蟹がいたよ」という従兄弟の言葉で
引き返して岩場から蟹を引っ張り出すと
「死んでるから食べられない」と伯父さんが言う
ポッチャーン・・
赤い甲羅の大きな蟹は
右に左に傾きながら沈んでいった
「母さん、沈んでくよ」
「馬鹿だね、死んだ蟹は食べらないんだよ」
足許では
ぬるぬるした黒い海草が
花のように開いたり 縮んだり
水平線はぼくの心の中にも広がっていて
「こっちへおいでよ!」と言う難破船の声が
潮騒の合間から聞こえる
積丹半島行きの遊覧船が
ぽっかりぽっかり去ってゆき
ハタハタなびく母さんのスカートに
夢中でしがみついては
遠い沖の上の入道雲を見上げていたっけ・・
その日星ひとつない浜辺で
酒臭い父に抱きかかえられて
真っ暗闇の海の中で手を離された
生まれてはじめての遊泳
立つこともできない海の底で
絶望で泣き叫びながら・・
それが最初に死を覚悟した思い出