どういう訳だか
父も母も兄弟の誰も乗らないのに
ぼくの家には素敵に白い自転車があった
大酒を飲んで
しょっちゅう雪の中で眠っていたり
留置場に入れられてた父が
どっかから盗んできたのかもしれない
運動会でも
父の働いてる建設現場へと弁当を持って行って
真っ黒い顔の父と昼飯だった
まだ十歳くらいの姉がぽつりと言った
「貧乏ってこんなんだね」
どの村や町へ行っても
一番貧乏な家だった
毎晩父の酒盛りだったので
それも仕方ない
その自転車に乗って橋を渡ってた時
浅い川へと5・6メーター落下した
橋の向こう側の誰かが手招きしていた
それ以来どうにも頭の具合が悪い
頭の中でいつも変な音がし続ける
いつもどうしてか
考えたのとは反対を言いやってしまう
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二月の詩(24) 白い自転車
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