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Channel: 詩人PIKKIのひとこと日記&詩
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シネクラブで『たそがれ清兵衛』、「山田洋次は女性へのまなざしがよい」

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堀切@シネクラブです。

8月10日、シネクラブを開催しました。題目は『たそがれ清兵衛』。木下昌明さ
んが「山田洋次の中で一番好き」だというイチオシ作品です。15人が集まりまし たが、特筆すべきは、これまでで一番初参加者が多かったこと。イベントカレン ダーを見た人から「山田洋次の作品というが、何をやるのか教えてほしい」とい う問い合わせが相次いだのです。<寅さん>でも<黄色いハンカチ>でもない時 代劇でしたが、山田ファンのみならず、見事に参加者の心をわしづかみにしまし た。当の木下さんは残念ながら入院のため参加できませんでしたが、病院から電 話をかけてくれました。初めてZOOMで参加した人もいました。

時代は幕末でありながら、現代社会の問題と見事に重なること。清兵衛は下級武 士。妻とは死に別れ、老母の介護と二人の幼子を育てるために、出世とは無縁の 生活を送っています。周囲からは嘲笑されていますが、個を抑圧しながら生きる あり方から自由である清兵衛は、とても魅力的でした。冒頭で娘たちが「繕い物 は役にたつけど、なぜ学問が必要なの?」と清兵衛に問うのですが、父の娘への 答えは「自分で考えて生きることができるようにだよ」というもの。結婚に失敗 した幼馴染の朋江が清兵衛の家に出入りするようになり、そこで築かれる関係も 素敵でした。山田洋次ファンの参加者からは「山田監督は女性へのまなざしがと てもよい」という指摘がありましたが、この映画もまさしくそうでした。コロナ 禍で人間とはどう生きるべきなのか、考えさせられる中でこの映画を観ることが 出来て本当によかったと、涙ながらに語る人もいました。以下、笠原真弓さんの 感想を紹介します。

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山田洋次の『たそがれ清兵衛』を見た。自分の生き方と藩士であることの狭間で 揺れる彼を見ていて、時代劇を借りた現代劇、しかも命をかけた切羽詰まったも のだと思った(改ざんで苦しむ赤木俊夫さんにも通じるし…)。原作の藤沢周平の 時代性と舞台となる明治維新の大変革、この映画が作られた2002年の社会と、監 督の感性。そしてさらにそれを見ている私の「今」という感覚。
藩命で行く果し合いの現場での田中泯とのやり取りは、このためにこの映画は作 られたというくらいの迫力だった。その言葉のいちいちに滲み出る共感。「この 男を殺したくない」となかなか剣を抜かない清兵衛に対し、「この男になら殺さ れてもいい」と思う相手。しかも武士としての対面を保っての闘い。
そして最後の『男はつらいよ』に通じる監督独自の優しさ。
維新という価値観のひっくり返る時代に、下級武士という感覚は、現代のサラ
リーマンそのものだった。
そして、言わずもがなの蛇足だが、宮沢りえも最高に良かった!(笠原さんの
Facebookより)

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