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Channel: 詩人PIKKIのひとこと日記&詩
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救助活動しない自衛隊、報道しないマスコミ - 石破茂に防災省を作らせるしかない

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球磨川が氾濫した。いつの間にか熊本県南部豪雨と名付けられた今回の大雨洪水災害は、全容も掴めぬまま被害を拡大させている。昨5日夜の西日本新聞の報道を見ると、死者22人、心肺停止17人、不明11人、1000世帯が孤立とある。被災2日目の時点で犠牲者推計が50人の規模になった。西日本豪雨の際の真備町の死者が51人で、昨年の台風19号の福島県の死者が30人、長野県の死者が5人、5年前の鬼怒川決壊での常総市の死者が14人だから、今回の被害の大きさが死者数の比較で想像できる。犠牲者はさらに増えるだろう。とにかくマスコミ報道が少なく、当局の捜索の動きが弱く、十分な捜索が行われていない印象を受ける。人吉市より奥に位置する山間地域、すなわち、川辺川上流の山江村・相良村・五木村、球磨川上流のあさぎり町・多良木町・湯前町に救助の手は入っているのだろうか。


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大雨洪水や台風や地震で被害が出ると、いつも同じことを書く。行政対応の怠慢を批判し、不作為を糾弾する。10年以上、条件反社的にやってきた。御嶽山の噴火や広島の土砂災害のときも告発した。が、問題提起として特に奏功することなく、社会に変化を起こすことなく、老人の愚痴の呟きのようになっている。ネットの多数の意識は地方の災害にどんどん無関心になり、地方の人々の苦境に冷淡になっている。

今回も、マスコミは東京のコロナ感染の拡大にフォーカスし、テレビ報道の映像と原稿の分量をそちらに割いた。左翼のコンサーン(懸案)は、もっぱら宇都宮健児の得票数だったようで、4日土曜のツイッターのトレンドには「Iamwith宇都宮けんじ」のタグが踊り、最後の選挙運動に熱が入っていた。九州の大勢の人々が濁流の恐怖の中で救助を待ち、助けを求めてツイッターに書き込みを入れる中、左翼は宇都宮健児の選挙活動にツイッターの情報資源を使い、一票でも多く山本太郎に差をつけるべく夢中になっていた。


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土曜も日曜も、反安倍左翼が政府の救助活動の不具合にクレームを入れる図はなく、都知事選かコロナの話題ばかりだった。災害発生から24時間以上が過ぎた5日朝、球磨村の保育園の庭に「120メイヒナン」の文字が書かれていて、ヘリの救助を待っているというNHKの報道があった。八代市坂本町のグラウンドにも「SOS」の文字があり、NHKのヘリが撮っている。

9年前の東日本大震災以来ではないだろうか。2年前の西日本豪雨でも、昨年の台風19号でも記憶がない。いかに初動が遅く、救助の活動が行き届いていなかったかの証明であり、自衛隊・消防・警察は何をやっていたのかと嘆息する。4日の朝から、NHKは救助を求める被災者に対して、ツイッターで発信するように呼びかけていた。多くの被災者がその行動に出ていたにもかかわらず、当局の救助隊が現場で救出活動を行っていない。救助部隊が少なかったからだ。西日本豪雨の教訓が生きておらず、逆にますます災害救助の行政出動が縮小し後退している。切り捨てられている。


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4日の昼前、NHKの正午のニュースの放送に合わせて、官邸で対策会議を開いてカメラ撮りをした安倍晋三は、「自衛隊について1万人態勢で」救助に臨むと発言している。やってる感演出のいつものプロモーションだったが、蓋を開けて現実はどうだったかというと、24時間後の河野太郎のツイートが真実を示していて、「自衛隊、今日は2140人態勢で、人命救助にあたっています」と書き込んでいる。重要な証拠だ。

何と、安倍晋三がコミットした「1万人」の5分の1の人員しか出動していなかった。なるほど、だからテレビの現場映像に迷彩服の影が薄いのかと納得させられたが、河野太郎の言った「2140人」も誇大な数字のように思われる。実際はどうだったのか、検証が必要で、安倍晋三の「1万人」と河野太郎の「2140人」の積算根拠を聴き出す必要がある。野党は政府に質問書を出すべきだ。われわれ国民も野党も、安倍晋三のウソに慣れっこの不感症になってしまっていて、やってる感演出のウソ宣伝を「またか」と素通りさせてしまっている。


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素通りさせてはいけない理由は、これが国民の命の問題だからであり、救助の手数が少なければ、救助の時間が遅れれば、それだけ犠牲者が増えるからだ。災害2日目の夜に犠牲者推計が50人を超える進行となったことは、テレビ報道でこの災害を見ていた者の感覚としては多すぎる数であり、意外な数だろう。災害時の人命救助は「発災後72時間」がクリティカル・ポイントだと言われている。そう言われてきた。今回の大雨による土砂崩れでは、刻限は7日の午前だろう。だが、その時間的な緊迫感が今回はまるでない。信じられないほど希薄で、救助部隊が疎らにルーズにだらだら活動している。

15年程前の自衛隊は、災害救助では緊張感が漲っていて、若い子たちが真っ先に危険な現場に飛び込み、徹夜でシャベルで土を掘り返す姿があった。泥だらけの現場に煌々とライトが照らされ、迷彩服の陸自隊員が黙々と果敢に作業に集中していた。テレビ局のカメラマンも心を一つにして撮っていた。そして、見事に土の中から生存者を救出し、国民から喝采を浴びていた。感動的だった。


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報道を見るかぎり、千寿園で心肺停止となった14人は、どうやら一晩現場で寝かされていた疑いがあり、4日中に病院搬送されてなかった形跡が窺われる。時間が経っても14人心肺停止が死亡に変わらず、ネットでも疑念の声が上がっていた。こんなことが日本であるのだろうか。その千寿園で4日午後に一人だけヘリに吊り上げられる救助場面がテレビで流されたが、その説明では、何と海保のヘリと救助隊員が動いていた。他にも、海保の隊員が泥水の中から女性を救助する映像があった。

陸自が動かず海保が動いている。あれほど九州に多く駐屯・展開している陸自の普通科連隊は、この事態に何をしているのだろうと怪訝に思ったが、もっと衝撃的なニュースが5日に発信されて腰を抜かして驚いた。何と、千寿園の被災者を救助する地上活動に当たっては、陸自から民間業者に要請が来て、人吉のラフティング会社がボートを提供し任務しているのだ。自衛隊が災害救助を民間企業に下請けに出しているのである。


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事実上の徴用だ。しかも、マスコミは、それを当たり前のように報道し、よくやったと経営者を記事に出して顕彰している。周知のとおり、自衛隊は自己完結の組織であり、任務に必要な糧秣や装備は何から何まで自前で調達し、他人の手を一切借りないのが前提で基本である。大事な災害救助の任務で、自分は能力がないからお願いしますと民間企業に外注委託するなどあり得ない。こんな事実は初めてだ。人吉市内から水が引き始めた4日午後も、5日午前も、実況中継に陸自のゴムボートの絵がなく不思議だったが、まさか千寿園の救出まで民間業者に依頼していたとは想像もできなかった。

人吉のすぐ南隣には陸自のえびの駐屯地が設営され、第24普通科連隊600名が配置されている。地元出身の子も多いだろう。九州道の加久藤トンネルを抜ければすぐの距離で、時間にして30分である。熊本には西部方面隊の総監部があり、第8師団が北熊本駐屯地にある。人吉まで九州道を下って2時間。防衛省・自衛隊のHPも西部方面隊のHPも、現時点で何も報告を上げていない。


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災害発生から2日経ち、思うところの結論を端折って言えば、石破茂を総理大臣にして防災省を作るべしということである。これまで私はこの意見に消極的で、屋上屋を重ねる組織改編と機構新設には抵抗があった。無駄な予算が増えそうで、天下りと利権の温床になりそうで、省庁をいじるのには反対の立場だった。だが、ここまで来たら、もう石破茂にやらせるしかない。

陸自の半分以上の人員は防災省に移し、自衛隊をリストラして専守防衛の部隊にする。防衛省の装備予算を激減させ、憲法9条の国家へ方向転換する。国軍化していた自衛隊の姿を変える。安全保障の長期的観点からも、米国は今後アジア太平洋地域から漸次撤退せざるを得ず、その中で、日本は9条に忠実に中国と平和外交で関係して行くしかない。日米安保条約に代わって日中平和友好条約が国家外交の基軸となる。あるいは二つが並立する。21世紀の世界のパワーバランスの変容と傾向は、必然的にその方向の必至性を確信づける。日本は9条しか生きる道がない。


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人吉には二度訪れたことがある。一度目は西鹿児島駅からバスに乗って、国道の古い加久藤トンネルを抜け、ループ橋を二旋して盆地に降りた。二度目は八代から九州道の勾配を這い上がり、真新しい肥後トンネルを抜けて人吉ICから市内に入った。司馬遼太郎の小説や紀行を熟読したせいで、人吉にはどうしても心惹かれて足が向いてしまう。一度目の旅のとき、ホテルの前の船着き場から川下りの舟に乗って一勝地まで行った。前の晩に給仕してくれた女中さんが、ホテルの前を小舟が通り過ぎるときに大きな旗を振って見送ってくれた。

そのような経験は過去に一度もなく、以後も一度もない。司馬遼太郎に誘われるまま、人吉に来てよかったと思った。西郷が川下りで八代まで行ったという話は、地元では確認できず、どうやら史実ではなく『翔ぶが如く』の創作らしい。南九州の山々はとても深く険しく、四国山脈と同じで稜線が尖っている。紀伊山地も同じ。中央構造線の南側の、海から隆起した新しい地層の特徴がある。そのため球磨川は熊野川と景観が似ていて、土佐の河川とも雰囲気が共通している。

その深く険しい南九州の山塊の中にポッカリと、奇跡的に人吉盆地の窪みができている。司馬遼太郎は「日本で最も豊かな隠れ里」と呼んだ。小さな長江と小さな四川盆地。100万年前は古人吉湖という湖ができていて、水が干上がって盆地になったと説明されている。ブラタモリ的な、九州の火山帯の激しい造山活動と地底のプレートの圧縮運動が交錯した太古のドラマが連想される。四国にも紀伊半島にもこれほど広闊な盆地はない。肥後細川と薩摩島津と、二つの大藩の緩衝地帯だった人吉相良。今は静かに特産の焼酎を造り、斉藤慶子の後輩の若い市長が町おこしに汗をかいている。行方不明者の早い捜索救助と、この地域の早い復旧復興を祈りたい。

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