米国よりもヨーロッパの失業率が低い理由…「総雇用保護」
ヨーロッパ、解雇防止ための支援に重点...韓国は?
チョン・ウニ記者 2020.05.11 08:55
米国の失業手当の累積申請件数が7週間で3300万人(現地時間5月7日基準)を記録した。 コロナ19のために失業率が大恐慌の水準になっている。 しかし似た封鎖措置を施行したヨーロッパの失業率は、 悪くなってはいるが米国ほど深刻ではない。 その理由は何だろうか? 糸口はヨーロッパの政府らの解雇防止対策にある。
米国はコロナ19感染に巻きこまれ、各州は3月中旬から次々と住民移動制限令を出し、 連邦政府は経済浮揚プログラムを導入した。 しかし米国の失業率の推移で見られるように、 労働者の雇用を維持するためには特に役立っていない。 市場自由主義を絶対視する米国の雇用政策は、 伝統的に解雇保護よりも失業支援に重点がおかれ、 最近の緊急対策もきちんと作動しないためだ。
▲米国の失業率がヨーロッパよりなぜ高いのかを扱ったフォーリンポリシーの記事。米国の失業率が深刻化し、多くのマスコミがこの問題を扱った[出処:フォーリン ポリシー画面キャプチャー]
米国連邦政府は3月27日、2兆2000億ドル規模の景気浮揚策(CARES Act)を導入した。 この措置のうち直接労働者を対象とする内容は、 △中小企業を対象とする給与保護プログラム(PPP)と △失業手当プログラム(FPUC、PUA、PUEC)が含まれた。 給与保護プログラムは事業主が雇用を維持すれば、 条件付きで帳消しが可能な融資を受けられるようにする内容だ。 失業手当プログラムは既存の失業手当てに4か月まで週600ドルを追加で支援(FPUC)し、 失業手当を受け取れない労働者に支援を保障(PUA)して、 制限的に最長13週間まで失業手当(PUEC)を受け取れるようにする内容で構成(KOTRA)されている。 しかしこれらの措置がすべてきちんと作動していないという話が流れている。
まず6千億ドル以上の予算が策定された給与保護プログラムを調べると、 施行されてから1か月経っても一銭も見ることも出来ない事業主が多い。 中小企業の代わりに大企業がこの資金を貸りたり、 融資プログラムの規則が曖昧で例外条項が多く、 銀行も申請者に非協調的なので恩恵の可能性が高くないからだ。 また、中小企業の間では融資を受けても今後、 本当に帳消しがされるかについての疑問も大きい。
実際に米国の連合通信(AP)の4月22日の報道によれば、 4月3日にこのプログラムが始まった後、 補助金を受け取ったことが明らかになった最低94の企業は、 株式公開をした大企業だった。 このうちの一部は市場価値が1億ドルをはるかに越える企業もあった。 また国際投資グループ、ゴールドマンサックスが1700の中小企業を対象に質問した調査の結果によれば、 このうち91%が政府の融資プログラムを申請したが、29%しか受け取りに成功しなかった。 結果として質問に答えた中小企業の労働者数は平均11人から6人へと45%減少した。 コロナ19の感染が拡散する前、米国の民間部門労働者の約半分は中小企業に雇用されていた。
失業手当プログラムの効果もとても制約的だ。 4月24日、米国のシンクタンク、ピューリサーチセンターが公開した調査結果によれば、 3月に雇用を失った労働者のうち29%しか失業手当を受けとれなかった程、 恩恵の幅は大きくない。
結果として、米国政府が3月に2兆ドル以上の危機パッケージを導入したが、 米国の貧困率は現在大幅に悪化している状況だ。 米国のブルッキングス研究所が5月6日に発表した研究結果によれば、 12歳以下の子供がある米国の家庭の17.4%が金がないため子供に十分食べさせられずにいることが明らかになった。 失業に最も影響を受けた人口は女性と有色人種でもあった。 4月20日のハーバードビジネスレビュー(HBR)によれば、 3月に消えた雇用70万のうち60%が女性が働いている雇用だった。 同じ時期に失業率が増加した規模は、 黒人が1.2%、ヒスパニックが1.6%、アジア系が0.9%、白人が0.9%だった。
そのため、米国では政府が労働者を解雇からさらに積極的に保護しなければならないという意見が出てきている。 特に同時期にヨーロッパも似たような封鎖を取ったが、 米国ほど失業率が大幅に悪化しなかったという理由で、 これらの事例を参照すべきだと主張する。
代表的に、米国の国際問題専門紙フォーリンポリシーは4月24日 「米国とは対照的に、他の先進国、特に北欧は米国よりさらによく対応している」とし 「ほとんどすべてのヨーロッパは企業を通して賃金の60-90%まで労働者の所得を直接補償する」と指摘した。 また「無制限の米国の自由主義経済は、 すでに2008年の金融危機後に信頼を失った」とも説明した。
総雇用を優先する解雇防止対策に重点
実際にヨーロッパ各国は解雇を禁止したり、 最大限防止して雇用を維持する対策に重点を置いてきた。
デンマークは3月15日、解雇防止のために政府が賃金の75%、 使用者が25%を支援する協約案を発表した。 3か月間、毎月1人当り最大3418ドル(約4244万ウォン)を支払うという内容だ。 オランダはさらに進んで解雇を避けるために賃金の90%までを国家が支援する。
ドイツは10年前の経済危機の時に導入したクルツアルバイト(短縮勤労)プログラムを拡大し、 経済危機の期間、自宅に留まらなければならない労働者を支援することにした。 コロナ危機前の賃金の67%、非正規職に対しては60%を提供するという内容だ。
フランスの場合はコロナ期間の解雇を禁じ、 雇用主は休業が必要な場合には給与の不足分を失業手当の形態で国家が支援することにした。 失業手当は最低賃金の100%または最低賃金の4.5倍まで、 一般給与の84%を保障することにした。 こうした措置はフランスのマクロン大統領が3月12日 「国家は家にいなければならない人々の経済的負担を一手に引き受ける」と話した後に実施された。 翌日、ブリュノ・ル・メール経済部長官も 「どんな労働者も1セントも失わない」と付け加えた。
英国政府も毎月最高2千500ポンド(約370万ウォン)まで 賃金を支援することにした。
スペイン政府は3月27日、コロナ期間に正規職や非正規職を含み、 解雇を禁止する措置を発動した。 スペインはまた、政府の基金で労働者賃金の最低70%を保障すると明らかにした。
KOTRAミラノ貿易館の報告書によれば、 イタリアでは3月中旬に企業の規模と職種により適用される 勤労者の一時的休職制度を5人未満の企業と農業および短期季節労働者、 観光と公演文化従事者まで適用範囲を広げ、 最長9週間資金を支援することにした。 雇用を維持して一時的休職を施行すれば、純賃金の80%まで保障する措置だ。 また、注文量が急減したり部署が閉鎖されるなどの「合理的な客観的事由」がある場合にも 60日間解雇を禁止した。
結果としてヨーロッパ連合の平均失業率は3月の6.6%と前月より0.1%pしか上がらなかった。 現在、米国の失業率14.7%の半分もならない。
こうしたヨーロッパのコロナ危機解雇保護措置は、 ほぼドイツのクルツアルバイト政策をモデルにしている。 しかしこのモデルも雇用不安定や労働貧困に対する効果は制約的で、 現地では批判されている。 ドイツ左翼党は国家が保障する支払い率が現在の60-65%ではなく、90%以上にしなければならないと見る。 また危機が繰り返され、クルツアルバイトがすべての労働者に拡大すると言いながら、 賃金カットのない雇用維持政策を展開すべきだという意見も少なくない。
こうした米国とヨーロッパの事例は韓国にとっても示唆的だ。 韓国政府は3月に休業手当ての90%に相当する雇用維持支援金を使用者に支払うと明らかにしたが、 誘引効果が大きくなく、実際の解雇防止効果は制約的だからだ。 実際に3月だけで22万5千の雇用が減ったが、 これは2009年に統計作成が始まって以来最大の幅だった。 口先だけの米国の給与保護プログラムや小商工人への融資を好む米国と同じような形だ。 また、最近では解雇防止よりも米国のように失業保護に重点を置く 全国民雇用保険の推進に傍点を打っているが、 これさえ後退しようとしている。 民主労総は5月10日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領就任3周年の国政演説について 「政府のコロナ245兆ウォンのうち、 直接の総雇用維持と生計対策に使われる費用は10%だけ」とし 「解雇禁止と脆弱階層に対する生計保障、全国民雇用保険」に動くよう要求した。
一方、ヨーロッパ外交関係委員会のジョナサン・ハッケンブロイチ委員はフォーリン ポリシーに 「それ(現在の危機が現わすこと)は経済問題における国家の復帰」だとし 「それは金融危機で始まったが、今ははるかに切実な状況」と指摘した。 ノーベル経済学賞を受賞した米国ニューヨーク大のポール・ローマー経済学者も 「現在の危機は両党とも感染させたレーガンの指針(新自由主義)に死を配達する」と強調した。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
ヨーロッパ、解雇防止ための支援に重点...韓国は?
チョン・ウニ記者 2020.05.11 08:55
米国の失業手当の累積申請件数が7週間で3300万人(現地時間5月7日基準)を記録した。 コロナ19のために失業率が大恐慌の水準になっている。 しかし似た封鎖措置を施行したヨーロッパの失業率は、 悪くなってはいるが米国ほど深刻ではない。 その理由は何だろうか? 糸口はヨーロッパの政府らの解雇防止対策にある。
米国はコロナ19感染に巻きこまれ、各州は3月中旬から次々と住民移動制限令を出し、 連邦政府は経済浮揚プログラムを導入した。 しかし米国の失業率の推移で見られるように、 労働者の雇用を維持するためには特に役立っていない。 市場自由主義を絶対視する米国の雇用政策は、 伝統的に解雇保護よりも失業支援に重点がおかれ、 最近の緊急対策もきちんと作動しないためだ。
▲米国の失業率がヨーロッパよりなぜ高いのかを扱ったフォーリンポリシーの記事。米国の失業率が深刻化し、多くのマスコミがこの問題を扱った[出処:フォーリン ポリシー画面キャプチャー]
米国連邦政府は3月27日、2兆2000億ドル規模の景気浮揚策(CARES Act)を導入した。 この措置のうち直接労働者を対象とする内容は、 △中小企業を対象とする給与保護プログラム(PPP)と △失業手当プログラム(FPUC、PUA、PUEC)が含まれた。 給与保護プログラムは事業主が雇用を維持すれば、 条件付きで帳消しが可能な融資を受けられるようにする内容だ。 失業手当プログラムは既存の失業手当てに4か月まで週600ドルを追加で支援(FPUC)し、 失業手当を受け取れない労働者に支援を保障(PUA)して、 制限的に最長13週間まで失業手当(PUEC)を受け取れるようにする内容で構成(KOTRA)されている。 しかしこれらの措置がすべてきちんと作動していないという話が流れている。
まず6千億ドル以上の予算が策定された給与保護プログラムを調べると、 施行されてから1か月経っても一銭も見ることも出来ない事業主が多い。 中小企業の代わりに大企業がこの資金を貸りたり、 融資プログラムの規則が曖昧で例外条項が多く、 銀行も申請者に非協調的なので恩恵の可能性が高くないからだ。 また、中小企業の間では融資を受けても今後、 本当に帳消しがされるかについての疑問も大きい。
実際に米国の連合通信(AP)の4月22日の報道によれば、 4月3日にこのプログラムが始まった後、 補助金を受け取ったことが明らかになった最低94の企業は、 株式公開をした大企業だった。 このうちの一部は市場価値が1億ドルをはるかに越える企業もあった。 また国際投資グループ、ゴールドマンサックスが1700の中小企業を対象に質問した調査の結果によれば、 このうち91%が政府の融資プログラムを申請したが、29%しか受け取りに成功しなかった。 結果として質問に答えた中小企業の労働者数は平均11人から6人へと45%減少した。 コロナ19の感染が拡散する前、米国の民間部門労働者の約半分は中小企業に雇用されていた。
失業手当プログラムの効果もとても制約的だ。 4月24日、米国のシンクタンク、ピューリサーチセンターが公開した調査結果によれば、 3月に雇用を失った労働者のうち29%しか失業手当を受けとれなかった程、 恩恵の幅は大きくない。
結果として、米国政府が3月に2兆ドル以上の危機パッケージを導入したが、 米国の貧困率は現在大幅に悪化している状況だ。 米国のブルッキングス研究所が5月6日に発表した研究結果によれば、 12歳以下の子供がある米国の家庭の17.4%が金がないため子供に十分食べさせられずにいることが明らかになった。 失業に最も影響を受けた人口は女性と有色人種でもあった。 4月20日のハーバードビジネスレビュー(HBR)によれば、 3月に消えた雇用70万のうち60%が女性が働いている雇用だった。 同じ時期に失業率が増加した規模は、 黒人が1.2%、ヒスパニックが1.6%、アジア系が0.9%、白人が0.9%だった。
そのため、米国では政府が労働者を解雇からさらに積極的に保護しなければならないという意見が出てきている。 特に同時期にヨーロッパも似たような封鎖を取ったが、 米国ほど失業率が大幅に悪化しなかったという理由で、 これらの事例を参照すべきだと主張する。
代表的に、米国の国際問題専門紙フォーリンポリシーは4月24日 「米国とは対照的に、他の先進国、特に北欧は米国よりさらによく対応している」とし 「ほとんどすべてのヨーロッパは企業を通して賃金の60-90%まで労働者の所得を直接補償する」と指摘した。 また「無制限の米国の自由主義経済は、 すでに2008年の金融危機後に信頼を失った」とも説明した。
総雇用を優先する解雇防止対策に重点
実際にヨーロッパ各国は解雇を禁止したり、 最大限防止して雇用を維持する対策に重点を置いてきた。
デンマークは3月15日、解雇防止のために政府が賃金の75%、 使用者が25%を支援する協約案を発表した。 3か月間、毎月1人当り最大3418ドル(約4244万ウォン)を支払うという内容だ。 オランダはさらに進んで解雇を避けるために賃金の90%までを国家が支援する。
ドイツは10年前の経済危機の時に導入したクルツアルバイト(短縮勤労)プログラムを拡大し、 経済危機の期間、自宅に留まらなければならない労働者を支援することにした。 コロナ危機前の賃金の67%、非正規職に対しては60%を提供するという内容だ。
フランスの場合はコロナ期間の解雇を禁じ、 雇用主は休業が必要な場合には給与の不足分を失業手当の形態で国家が支援することにした。 失業手当は最低賃金の100%または最低賃金の4.5倍まで、 一般給与の84%を保障することにした。 こうした措置はフランスのマクロン大統領が3月12日 「国家は家にいなければならない人々の経済的負担を一手に引き受ける」と話した後に実施された。 翌日、ブリュノ・ル・メール経済部長官も 「どんな労働者も1セントも失わない」と付け加えた。
英国政府も毎月最高2千500ポンド(約370万ウォン)まで 賃金を支援することにした。
スペイン政府は3月27日、コロナ期間に正規職や非正規職を含み、 解雇を禁止する措置を発動した。 スペインはまた、政府の基金で労働者賃金の最低70%を保障すると明らかにした。
KOTRAミラノ貿易館の報告書によれば、 イタリアでは3月中旬に企業の規模と職種により適用される 勤労者の一時的休職制度を5人未満の企業と農業および短期季節労働者、 観光と公演文化従事者まで適用範囲を広げ、 最長9週間資金を支援することにした。 雇用を維持して一時的休職を施行すれば、純賃金の80%まで保障する措置だ。 また、注文量が急減したり部署が閉鎖されるなどの「合理的な客観的事由」がある場合にも 60日間解雇を禁止した。
結果としてヨーロッパ連合の平均失業率は3月の6.6%と前月より0.1%pしか上がらなかった。 現在、米国の失業率14.7%の半分もならない。
こうしたヨーロッパのコロナ危機解雇保護措置は、 ほぼドイツのクルツアルバイト政策をモデルにしている。 しかしこのモデルも雇用不安定や労働貧困に対する効果は制約的で、 現地では批判されている。 ドイツ左翼党は国家が保障する支払い率が現在の60-65%ではなく、90%以上にしなければならないと見る。 また危機が繰り返され、クルツアルバイトがすべての労働者に拡大すると言いながら、 賃金カットのない雇用維持政策を展開すべきだという意見も少なくない。
こうした米国とヨーロッパの事例は韓国にとっても示唆的だ。 韓国政府は3月に休業手当ての90%に相当する雇用維持支援金を使用者に支払うと明らかにしたが、 誘引効果が大きくなく、実際の解雇防止効果は制約的だからだ。 実際に3月だけで22万5千の雇用が減ったが、 これは2009年に統計作成が始まって以来最大の幅だった。 口先だけの米国の給与保護プログラムや小商工人への融資を好む米国と同じような形だ。 また、最近では解雇防止よりも米国のように失業保護に重点を置く 全国民雇用保険の推進に傍点を打っているが、 これさえ後退しようとしている。 民主労総は5月10日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領就任3周年の国政演説について 「政府のコロナ245兆ウォンのうち、 直接の総雇用維持と生計対策に使われる費用は10%だけ」とし 「解雇禁止と脆弱階層に対する生計保障、全国民雇用保険」に動くよう要求した。
一方、ヨーロッパ外交関係委員会のジョナサン・ハッケンブロイチ委員はフォーリン ポリシーに 「それ(現在の危機が現わすこと)は経済問題における国家の復帰」だとし 「それは金融危機で始まったが、今ははるかに切実な状況」と指摘した。 ノーベル経済学賞を受賞した米国ニューヨーク大のポール・ローマー経済学者も 「現在の危機は両党とも感染させたレーガンの指針(新自由主義)に死を配達する」と強調した。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。