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詩 ふるさと

ー「友川かずきのうたが胸にしみいるとしたら、君は幸せだと思え。 涙があふれたら、君は選ばれた人間だと思え。君にもまだ無償の愛 に感応する心が残っていたのだ。無償の愛がまだ人の世に存在する こと、それこそが友川が身をもってあがない、あかしてくれたこと なのだ。(大島渚)ー
http://www.youtube.com/watch?v=yBq_mZQJ9pI&feature=related


ふるさとはいっも
夢みる街にそっくりで
いちばん似てたのは
スウェーデン映画の「犬のごとき人生」の港まち

雪が溶けだすとまるで
すべての絵の具をぶちまけたかのうな野原に
あらゆる花々がいっせいに咲き出す

そんな色と風の洪水に
どうしていいか分からないぼくらは
隠れんぼなんかしていた

テレビが入ってたダンボールの箱に隠れたり
そのダンボールを持ってって
何度も何度もすぐ裏の丘からすべおりた

夏の宵には銭湯から帰って
濡れた髪のまんまみんなで
町外れのオンボロの映画館へと出かけた

好きだった娘の
家の前を口笛を吹いて
行ったり来たりしたりしながら

夏の夕立のなかでは
とぼとぼと釣竿を担いで
海水パンツひとつで

線路の余熱を感じながら
もくもくとした入道雲を背に
一列に歩いていた日もあったっけ

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