返せ!
ー世界一美しかったこの国の自然や
世界一安全だった食べ物と水とが壊滅的な被害を
ぼくのふるさと北海道にも放射性物質がという
返せ!
自然や食べ物を多くのいのちを
返せ!
死ななくてもよかった動物や人間やすべてのいのちを
原発被害者の生活を
奪われてしまった子供たちの未来を
返せ!ー
「四月がいちばん好きな季節」と
夕焼けに染まった橋の上で
きみがつぶやいたから
四月がいちばん好きな季節になった
溶け始めた雪の間から
きらり きらきらと
さらさらの川面が
また今年も顔をのぞかせる頃
「福寿草を採りに行こう」と父がぽつりと呟く
残雪でまだらになった丘を
いくつもいくつも越え
風にそよぐ橋を
いくつもいくつも渡り
ああ 今年もやっぱり
いつものせせらぎのほとりから
頭をのぞかせている福寿草の蕾
「みてみて!」と
従姉妹の君が指差す先の森には
まるでドガの踊り子たちみたいなカタクリ(花言葉は「初恋」)のひと群れが
風の中で慎ましやかにワルツの練習中
最新の詩1 生きる
亀のように万年生きても仕方なかろう
鶴のように千年生きても
人間としてたかだか数十年生きるだけ
それを阻む者たちに異議申し立てをするだけ
ふざけるのもいい加減にしろと
最新の詩2 「疑問」
秋の虫たちが声を鳴き交わしている
小鳥たちもまた
人間だけが同じ種族で殺しあってきた生き物
肥大化するばかりの私利私欲や
それを肯定するために生みだされた
国家や宗教や資本を隠れ蓑に