十月の詩(10) 終末
いよいよ終末が近いと風の中のお前がいう
もはやぼくらには逃げ場所などないのだと
立ち向ってはじめて道が見えてくるというのに
敵はまんまと時代のはるか向こうでほくそ笑む
漆黒の空だけがぼくらの背景になる
ジグザグ落ちる雷だけが心象風景を染める
もう帰るべき道などどこにもない
もうもうと立ち込めるのは絶望と虐殺の血生臭い匂い
「いつの時代だって同じさ」とお前は言うけど
無傷の心さえももはやどこにも残っていない
虚無の代わりにあらゆる汚染が覆い尽くした
大地も海も 空も街も人の心をも
すべては汚染されて急速に崩れゆく砂のトルソーになる
誰もがそれに気づきはしないとはいえ
ぼくらの誰もが日々失明してゆく
砂粒まみれですでに失われた砂漠の退路になる
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十月の詩(10) 終末
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