宵深き街のほとりにうずくまりほろほろとパンを食みにけるかも 松倉米吉
この石川啄木のほとんど唯一の後継者ともいうべき歌人についてはー日本でも最も優れたノンフィクション作家「松下竜一その仕事 14檜の山のうたびと」(河出書房新社)の山口泉氏の解説参照を。
松下竜一全集22の「狼煙をみよー東アジア反日武装戦線」の同氏の解説と、中沢新一「僕の叔父さん」が、最近読んだ天皇制や死刑制度について最も教えられた本だった。
二十世紀末に、正当な弁護士活動で冤罪に貶められた安田好弘弁護士ー長い間の刑廃止や人権擁護派弁護士として有名な弁護士の冤罪の理由もとても興味深い。
「大逆事件」という日本史上最悪の暗黒裁判(冤罪の上に傍聴人や証人が認められず、逮捕後約半年での即死刑判決やその後一ヶ月で処刑)や、その後の関東大震災後の約一万人の植民地にされたばかりの朝鮮人や中国人やドモリの人々や、大杉栄一家や労働運動家多数虐殺の時代の再現は、もうそこまで迫っている。明日はもはや僕や君がその犠牲者だ。
つい先日マスコミを賑わした「共謀罪」等では、天皇暗殺を話したり酔って大号壮言した「大逆事件」の罪なき人々は、再度また死刑にされることだろう。ぼくらもまた同じように・・
いつの時代の権力もまた、やろうとするのは、疑わしきをすべてを捕まえて殺すことだ!
僕の利用してる図書館には「松下竜一全集」がほとんど揃っていなくて残念!
《大杉・野枝の四女のさわやかな苦闘を描いた『ルイズー父に貰いし名は』のあと、松下さんは、大杉の同士で無念の死を遂げる、和田久太郎を描いた『久さん 伝』へと、アナキストへの同調を隠さなくなる。それは(公害反対)運動の中での革新政党のだらしなさと傲慢さにほとほと愛想がつきていたからであろう。
市民運動といいながらも、松下さんの胸の中には、国家に対する叛逆の想いが熱くなってゆく。かって勢いのよかった論客たちが、次第に体制化してゆくのには まるで逆行するかのように彼はますますラジカルになっていく。企業爆破事件の被告にたいするシンパシーによって書かれた『狼煙を見よ』では、警視庁の家宅 捜査を受けるなどの嫌がらせに遭う。それへの怒りをバネにして、『怒りていう、逃亡に非ず』を上梓、ついに日本赤軍のコマンドにたいする共感をあきらかに するのである。
わたしがいちばん好きな作品は、ダム建設反対運動で、孤立しながらも莞爾と笑って闘う室原知幸を描いた『砦に拠る』である。主人公と松下竜一の憤怒がよくつたわってくる。》(『松下竜一その仕事19「憶ひ続けむ」ゲストエッセイ 鎌田彗)