「私は海を抱きしめていたい」という一行が
心に棲みついてしまった18歳以来
坂口安吾はぼくの神さまになり
旅がぼくの人生になった
母の愛情の欠乏で作られた性格には
たぶん似た点が多かったのだろう
それがなんであれ
行って確かめずにはいられなかった
馬鹿でかくて曖昧模糊とした物たちに出会うために
空や海や草原や風のほとりを経巡るぼくの放浪の旅
「人生の落伍者になる」という暗い決意を
ぼくもまた共有した
酒やギャンブルや麻薬に溺れ
性病に苦しむ安吾に憧れさえした
生まれて初めて
「人間のくず」「落伍者」等と
知人たちから指差されたときに
ほっと安堵の息をついている自分がいた
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最近の詩 ぼく放浪の旅
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